レクサス「NX」がアップデート。新しく設定された“OVERTRAIL”パッケージ装着車両にサトータケシが乗った!
見てくれだけのアウトドア仕様ではない
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レクサスNXに改良が施されるのと同時に新たに設定された“OVERTRAIL”は、ひとことで言うとアウトドア仕様だ。SUVのアウトドア仕様と聞くと、“白い白馬”のようでヘンだと思われるかもしれない。けれども、実車の外観はすっきり、精悍にまとまっている。
マットブラックに塗られたグリルやアルミホイール、シックなインテリアカラーなど、見る人が見れば標準仕様との違いがわかるけれど、それほど興味のない人にはフツーのレクサスのSUVに見えるという絶妙の塩梅だ。やりすぎない、控えめの演出がレクサスっぽい。
“OVERTRAIL”は、NXの450h+、350h、350の3つのグレードに設定されるけれど、本日の試乗車は2.4リッター直列4気筒ガソリンターボエンジンを積むNX350。NX350には2WD(前輪駆動)の設定がないので、試乗車も当然ながらAWDだ。
都心をスタートして真っ先に感じることはふたつ。
まず、サイズ感がいい。全長4660mmというサイズは、同じ基本骨格を用いるトヨタの「ハリアー」や「RAV4」と同等だから、日本の道路事情でも取りまわしがいい。
次に感じるのは、乗り心地の良さ。レクサスNXは2022年にデビューしたときからボディのしっかり感と好ハンドリングが特徴だったけれど、そこに今回の改良で、やさしい乗り心地が加わった印象だ。
“OVERTRAIL”は路面の凹凸や轍を容易に乗り越えられるように、標準仕様に比べて15mm最低地上高を高めている。一般にこうしたチューニングを施すと、車体がぐらりと傾かないように足まわりを締め上げて、乗り心地が悪くなる傾向にある。
けれどもこのNX350“OVERTRAIL”は最低地上高を引き上げるだけでなく、路面状況や運転スタイルに応じて足まわりのセッティングを調整するAVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)にも手をくわえたという。この“ひと手間”によって、路面からのショックをしんなりとさせているわけで、見てくれだけのアウトドア仕様ではないのだ。
元気のいいエンジンこのように足まわりは洗練されているけれど、エンジンはなかなかやんちゃで、元気がいい。アクセルペダルを踏み込むと、威勢のいい音が高まるのと同時にエンジンのパワーが盛り上がる。
レクサスに限らず最近はPHEV(プラグイン・ハイブリッド)も含めたハイブリッド車が増え、なるべくモーターが頑張ってエンジンに仕事をさせないようにしている。けれども純エンジン車であるNX350“OVERTRAIL”は、低回転域ではなかなか力を発揮できないというエンジンの弱みも、得意の回転域に入った途端に生き生きとするエンジンの美点も、ストレートに伝わってくる。
ほかに2.5リッター直4プラグイン・ハイブリッド、2.5リッター直4ハイブリッド、2.5リッター直4(自然吸気)と、計4つのバリエーションがあるNXのパワートレインの中でも、個人的にはこの2.4リッター直4ターボが一番、アクセルペダルを踏む醍醐味が味わえる。エンジンが大好きな、“昭和のクルマ好きあるある”とも言えましょうが……。
で、こうしてアクセルペダルを踏む醍醐味を味わっていると、ふたたび足まわりが洗練されていることに感心する。コーナリング中に、車両がいまどんな状況にあるのかが、ステアリングホイールの手応えで逐一伝わってくる。このインフォメーションは非常に解像度が高いから、安心して運転できることと、楽しく運転できることが、高次元で両立する。
コーナーでの身のこなしもすっきりしており、前述したようにデビュー時からの優れた操縦性に磨きがかかっている。
サスペンションのチューニングのほかに、ボディのねじれや歪みを減らすために車体後部を補強しているという。ハンドル操作時のダイレクト感が向上していることや、乗り心地のよさ(=サスペンションが正しく働いている)は、このボディ補強もかなり貢献しているようだ。
と、いったように、レクサスNX350“OVERTRAIL”から感じるのは、アウトドア仕様の格好よさとともに、丹精込めて熟成を図る真摯な姿勢だ。ハイブランドと老舗アウトドアメーカーがコラボしたマウンテンブーツとでもいいましょうか、お洒落に使う人も、登山に使う方も満足できるような仕上がりだった。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)
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